釘打ち機はなぜ電動工具として普及しない?バッテリー式・コードレスに出来ないワケとは

釘打ち機はなぜ電動工具として普及しない?バッテリー式・コードレスに出来ないワケとは

充電式の釘打ち機は全く存在しないわけではありませんが、ほとんどのメーカーがAC100V電源式の有線コンプレッサーにホースで接続するエア釘打ち機を販売しています。


実は釘打ち機は〝銃〟に近い構造をした工具なので、製造するメーカーは銃刀法に抵触しないか慎重に考えなければならないという大人の事情があります。


そこで今回は、釘打ち機がなぜ電動工具にならないのか、その理由について以下の通り解説していきます。

  • 電動釘打ち機が普及しない2つの理由
  • もし普及したら…?職人さんのメリット・デメリット


「なんで釘打ち機はあんなにごちゃごちゃしているんだろう」と感じているすべての職人さんへ、とても参考になる記事になっているのでぜひ最後まで読んでみてください。

 

電動釘打ち機が普及しない2つの理由

釘打ち機は一般的にはエアーコンプレッサーとホースを接続して使用するので、現場には大きな器材とホースで面積を圧迫してしまうというデメリットがありました。


「インパクトドライバみたいに、釘打ち機も電動式になればいいのに…」


このよう感じた方が多いでしょう。


しかし釘打ち機を電動式工具にできない理由が3つあります。


ここからは、釘打ち機が電動式化されない理由について紹介していきます。

 

銃刀法取締法では〝コンプレッサー〟と〝ホース〟がポイントに

バッテリー式のコンプレッサーや、電動釘打ち機の普及が進まない大きな〝壁〟となっているのが銃砲刀剣類所持等取締法です。(以下、銃刀法)


警視庁は、圧縮空気を使用する釘打ち機に対して現行販売している国内モデルに対しては「銃刀法に該当しない」としています。


しかし、それには〝ある条件〟の元判断されています。


圧縮空気を利用した自動釘打器については、常時電源を必要とし、多くの場合他の用途にも利用可能な別置式エアーコンプレッサーとホースで接続された状態で使用されるため、使用時の形態から犯罪者等が凶悪犯罪に使用する危険性が少ないとして、警察庁により、空気銃に該当しないものと判断されている。

【引用】

 

市場開放問題苦情処理推進会議第1回報告書(平成6年5月13日)|内閣府

上記の文面を少しわかりやすくすると、以下の通りになります。

 

  • 釘打ち機は常に電源が必要
  • 釘打ち機はコンプレッサーとホースにつながれている必要がある
  • 使用時の形態から犯罪に使用されるリスクは少ない


上記3つを根拠に、警察では「釘打ち機は電源とエアコンプレッサー・ホースの3点を満たせば銃刀法に抵触しない」と判断しているということになります。


逆に、

  • バッテリー搭載で電源が不要になったコードレスモデル
  • コンプレッサーとホースの接続が不要になったモデル


このような革新的な電動釘打ち機がもし他メーカーから発売されると、銃刀法に抵触してしまうリスクがあります。


また、日本国内ではバッテリー式コンプレッサーは規制されていませんが、バッテリー式のコンプレッサーと電動釘打ち機を組み合わせると、前述した「釘打ち機は空気銃に該当しない」の概念が揺らいでしまいます。



それぞれ単体で所有することは銃刀法の解釈上「対応次第で銃刀法に抵触する」特殊な製品という取扱いになるので、今後銃刀法の改正案が可決され、風向きがかわるのを待つしかありません。


ほとんどの職人さんはAC100V電源式のコンプレッサーを所有しているかと思いますが、バッテリー式のコンプレッサーと充電式電動釘打ち機を選んでしまうと銃刀法に抵触してしまう可能性が高まります。


海外製のコンプレッサーには、バッテリー式で電源コードを必要としないコンプレッサーも販売されていますが、日本では銃刀法の改正がいつ起こるのかまったく時期が読めないので、下手に手をださない方が無難でしょう。

 

バッテリー式コンプレッサーは〝高圧仕様〟で他エア工具より劣る性能

海外製のバッテリー式コンプレッサーのスペックを見てみると、くみ上げ速度が足りないので大量のエアを消費する釘打ち機や、ネジ打ち機に対応できません。


根本的にタンク自体の容量が少ないのに加えて、タンク内圧力も0.9mPaの常圧までしか貯められないので、慢性的なエア不足が避けられないようになっています。


また電源がバッテリーということもあり、18V(6.0Ah)を使用したとしても10分間程度しか稼働しないので、作業量が圧倒的に足らず使いにくくなっています。


銃刀法、そしてバッテリー式という性能面の課題を抱えたコンプレッサーと電動釘打ち機は、現代の日本ではほとんど普及しておらず、売れない原因をメーカーは作らないようにしています。

 

もし日本で電動釘打ち機が普及したらどうなる?職人さんのメリット・デメリット

現状AC100V電源式のコンプレッサーにホースを接続して釘打ち機を使用いているかと思いますが、もしこの電源コードだけでもなくなれば、とても快適な作業現場になると思いませんか?


前述したように日本では銃刀法の関係で未発売モデルとなっていますが、海外モデルでは職人さんが思わず「いいな」と感じる電動釘打ち機が販売されています。


海外では、エア工具はコンプレッサーを含め全体的にエネルギー効率が悪いものの、圧縮空気の膨張による瞬発的なエネルギーが利用可能なので、釘打ち機など幅広い用途で主流の方法になっています。


つい最近まではニカドバッテリーを搭載していたため、ピンタッカやステープラなどの細い釘で用いられていました。


しかしリチウムイオンバッテリーの登場で、フィニッシュネイラなどの電動化も進化を進め、海外市場ではさらに太い釘が打てる「フレーミングネイラ」へ入れ替わりつつあります。


このように日本と海外で異なる釘打ち機とエアコンプレッサーですが、もし充電式のコードレスモデルになったらどのようなイノベーションが起こるのでしょうか。

メリット

デメリット

・エアホースとコンプレッサーが不要になる

・作業時の騒音に悩まされず、周囲へ配慮しやすい

・釘打ち作業のランニングコストが安い

・メンテナンス頻度が少ない など

・釘打ち機本体1台の初期コストが高い

・本体重量が重い

・ロール釘には基本的に非対応

・一部モデルは日本の銃刀法に抵触する など

海外製の釘打ち機は基本的にロール釘には対応していませんでしたが、米Milwaukee社が電動釘打ち機の最後の課題「ロール釘」に対応したモデルを発表しました。


2019年に発表されたロール釘対応モデルは、ロール釘の巻き上げ構造で特許を出願しており、この特許によって電動釘打ち機でもロール釘に対応できるようになりました。


さらに2020年5月には、米DeWALT社がロール釘に対応した電動釘打ち機を発売。


米DeWALT社のロール釘対応釘打ち機は、「フライホイール」を採用したことで、起点運動を貯め込むことができるようになっています。


回転運動を貯め込むことで、モーターの回転をフライホイールに伝達して回転エネルギーを貯蔵し、フライホイールの回転力を打撃エネルギーに一気に変換します。


フライホイールは銃刀法を回避できる期待の方法で、既にマキタがST003Gという商品を先日発売されましたがフライホイールの技術が使われております。

 

日本で使える電動釘打ち機は?おすすめ5選

日本では釘打ち機はコンプレッサーと釘打ち機をホースで接続する必要があります。


しかし実際に作業を行う職人さんにとっては、このホースが大変わずらわしくて、ひっかけてしまうことも…。



そこでここからは、日本で使える釘打ち機に近いモデルのおすすめ電動工具を5機種ご紹介いたします。

 

マキタ 充電式タッカ ST113DSH

参照 
Amazon makita ST113DSH

マキタの10.8Vバッテリーで使用できる充電式タッカです。


釘打ち機とは少し異なりますが、タッカは建築用のホチキスのようなもので固定するための電動工具です。


用途や場所によっては釘打ち機ではなくタッカという選択肢もあり、こちらのモデルは10.8Vスライド式バッテリーで稼働する、軽量・コンパクトなモデルです。


トリガを引いたまま連発はもちろん、断熱材の留めなど狙った場所に打ち込む単発モードと、必要な2モードが搭載されています。


突然の雨にも安心の防滴・防じんAPT仕様で、空打ち防止機構やトリガロックなど、安全面にも配慮されたモデルです。

 

ハイコーキ コードレス仕上げ釘打ち機 NT3640DA

参照 
HiKOKI NT3640DA

独自の反動低減機構+強力スプリングによってダントツの打ち込み力を誇るNT3640DAは、35mmの釘をしっかり打ち込め、40mm釘にも対応しています。


内装下地や軒天仮留め・下地施工、型枠の面木留めなど、幅広い用途に活用可能です。


18〜36Vまでの互換性があるマルチボルトバッテリーとブラシレスモーターによって、軽快な打ち込みを実感できます。

 

ハイコーキ コードレスばら釘打ち機 NH18DSL

参照 
HiKOKI NH18DSL

狭い場所でも手軽に釘打ちをサポートしてくれるのが、コードレスばら釘打ち機です。


コンパクトボディに設計したことで、狭い場所でもスピーディーな作業が可能です。


先端部にはマグネットを搭載しているので、釘が落ちず施工しやすいよう工夫されています。

 

マキタ 充電式フロアタッカ ST003G

参照 
makita ST003G

2024年5月にマキタ 充電式フロアタッカ ST003Gが発売されました。


今回のマキタ 充電式フロアタッカ ST003Gはマキタで初となる充電式のフロアタッカです。


高速回転するフライホイールにドライバを押し当て、ステープルをパワフルに打ち込みします。


堅い材料にも安定的に作業が行え、さらにハイパワーブラシレスモータ搭載によりパワフルな仕様です。


マキタ充電式モデル初となるフライホイール方式の採用によりハイパワーと低反動を両立しているのが特徴となります。

 

ハイコーキ コードレスフロア用タッカ N3604DM

 

参照 
HiKOKI N3604DM

コードレスの取り回しやすさとエア工具の使用感を実現しました。


38mmの長さまで対応するパワフルな打込み力反動低減機構により、本体の浮き上がりを抑え、さらに強力なスプリングを採用することで様々な木材にもしっかり打てるパワフルな打込み力を実現しました。

 

まとめ

一般的にはAC100V電源をコンセントに差込み、コンプレッサーと釘打ち機をホースで接続することで作業を行いますが、コンプレッサーは大きくて重く、荷物になります。


またさまざまなホースやコードが現場にちらばるので、作業の邪魔になることもあるでしょう。


日本では銃刀法の関係で、コードレスコンプレッサーとコードレスの釘打ち機の製造に消極的です。


そこで作業に応じて、今回ご紹介した5つのコードレス釘打ち機を使い分けるようにしてみてはいかがでしょうか。

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